職場環境等要件の選び方 — 6つの区分と、記録の残し方

処遇改善加算の要件のうち、職場環境等要件はいちばん手が止まりやすいところです。賃金と違って金額で示せず、「何をどこまでやれば満たしたことになるのか」が見えにくいためです。ただ実際には、すでに行っていることが該当する場合が多くあります。

制度

賃金以外の「働きやすさ」を求める要件

処遇改善加算は賃金を上げるための加算ですが、賃金だけを上げても人は定着しない、という前提が制度側にあります。職場環境等要件は、賃金以外の働きやすさについても取り組んでいることを求めるものです。

取組は区分ごとに例が示されており、算定する加算区分に応じて必要な実施項目数が決まります。必要な項目数と区分ごとの条件は改定で見直されるため、必ず指定権者が示す最新の通知で確認してください。

6つの区分

  • 入職促進に向けた取組 … 採用の方法を広げる、他業種からの転職者を受け入れる仕組みをつくる など
  • 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 … 研修の機会を確保する、資格取得を支援する、キャリアパスを示す など
  • 両立支援・多様な働き方の推進 … 育児や介護と両立できる勤務形態、短時間勤務や時間帯の選択肢を用意する など
  • 腰痛を含む心身の健康管理 … 移乗介助の負担を減らす、健康診断やメンタル面の相談窓口を整える など
  • 生産性向上のための業務改善の取組 … 記録の電子化、情報共有の仕組み、会議や記録の見直し など
  • やりがい・働きがいの醸成 … 利用者や家族からの声を共有する、職員同士が評価し合う場をつくる など

区分の名前だけを見ると大がかりに聞こえますが、示されている例の多くはすでに多くの事業所で行っていることです。新しく何かを始める前に、いま行っていることがどの区分に当たるかを確かめるほうが先です。

まず棚卸しから始める

新しい取組を考えるのは、棚卸しが終わってからで十分です。手順は次のとおりです。

  1. 昨年度から今年度にかけて実際に行ったことを、思いつくまま書き出す(研修、面談、機器の導入、勤務形態の変更、健康診断、会議の見直しなど)
  2. 書き出したものを6つの区分に当てはめる
  3. 区分ごとに、必要な項目数を満たしているかを確認する
  4. 足りない区分だけ、新しく始めることを検討する

記録の残し方

職場環境等要件でつまずくのは、実施そのものより実施したことを後から示せるかです。賃金は台帳に残りますが、取組は意識して記録しないと何も残りません。

取組の種類と、残しておくとよいもの
取組の種類残すもの
研修・勉強会実施日、テーマ、参加者名簿、資料
機器・用具の導入導入日がわかるもの(納品書など)、設置状況の写真
勤務形態・制度の変更改定した規程、周知した文書
面談・意見交換実施日と参加者、話した内容の要点
業務の見直し見直し前後がわかるもの(手順書、会議の議事録)

凝った様式は要りません。実施日と、何をしたかと、誰が関わったかの3点がわかれば足ります。むしろ様式を作り込むほど続かなくなるので、既存の会議記録や日誌に一行足す形のほうが現実的です。

よくある誤解

「新しく始めた取組でないと数えられない」

そのような限定はありません。以前から続けている取組も、要件の項目に該当し、実施していることを示せるなら数えられます。毎年ゼロから新しい取組を考える必要はありません。

「大がかりな設備投資が要る」

生産性向上の区分があるため、機器やシステムの導入が必須だと受け取られがちですが、示されている例には会議や記録の見直し、情報共有のしかたの改善といった、費用のかからない取組も含まれています。お金をかけたかどうかではなく、働きやすさに向けて何をしたかが問われています。

「全区分を埋めなければならない」

必要な実施項目数は加算区分に応じて定められており、すべての区分をすべて埋めることを求められているわけではありません。ただし区分ごとに最低限の数が決まっている場合があるため、どの区分から何項目選ぶかは通知で確認してください。

上位区分を目指すときに効いてくる

加算区分を上げるとき、キャリアパス要件(規程の整備や資格者の配置)はすぐには動かせません。一方、職場環境等要件はいま行っていることの棚卸しだけで満たせる場合があるため、着手の順番としては早い段階に置けます。

また、賃金以外の取組は職員に見えやすい部分でもあります。処遇改善加算の趣旨を職員に説明するとき、「手当が増えた」だけでなく「腰の負担を減らす用具を入れた」「シフトの希望を出せるようにした」と並べられるほうが伝わります。周知の要件とあわせて考えると、記録を残す意味も見えやすくなります。

毎年続けられる形にする

要件は一度満たせば終わりではなく、年度ごとに満たし続けていることを示す必要があります。初年度に無理のある取組を並べると、翌年度に同じことを繰り返せず、区分を下げることになりかねません。

選ぶときの基準は「毎年できるか」です。年1回の研修、定例の面談、すでに導入した機器の運用といった継続する性質のものを軸にして、新規の取組はそこに足していく形にすると、年度をまたいでも崩れません。

また、取組の記録は運営指導でも確認されます。年度末にまとめて思い出そうとすると、実施した事実はあっても日付が分からない、参加者が分からない、という状態になります。実施したその場で一行残すことが、結局いちばん手間の少ないやり方です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。