「実地指導」は「運営指導」に変わった
以前「実地指導」と呼ばれていたものは、令和4年の指針改正で「運営指導」という呼び方に整理されました。名称だけでなく、オンラインや書面でのやりとりを取り入れた運用も広がっています。呼び方が変わっても、処遇改善加算について確認される中身が変わるわけではありません。
介護報酬の加算は、要件を満たしていなければ返還の対象になります。処遇改善加算は金額の桁が大きいため、指摘が出たときの影響も他の加算より大きくなります。
見られるのは「3つの一致」
確認の軸はおおむね次の3つです。金額そのものより、それぞれが食い違っていないかを見られると考えておくと準備しやすくなります。
| 資料 | 示すもの | 一致していてほしい相手 |
|---|---|---|
| 計画書・実績報告 | 届け出た内容と、実際に配った額 | 賃金台帳の支給額 |
| 賃金台帳・給与明細 | 職員に実際に支払った額 | 計画書に書いた配り方 |
| 就業規則・賃金規程 | 手当の根拠と昇給の仕組み | 計画書に書いた要件の該当状況 |
この3つのどれか1つでも別々に作られていると、そこが指摘になります。たとえば計画書に「処遇改善手当として毎月支給」と書いているのに、賃金規程にその手当の定めが無い、といった形です。
そろえておく書類
- 当該年度と前年度の処遇改善計画書・実績報告書の控え(提出した様式そのもの)
- 賃金台帳(対象職員の、対象期間すべての月)
- 就業規則・賃金規程(処遇改善手当の定めを含む最新版と、改定履歴)
- キャリアパス要件に関する書類(任用要件、昇給の仕組みを示すもの)
- 研修計画と、実際に行った研修の記録
- 職場環境等要件として実施した取組の記録
- 賃金改善の内容を職員へ周知したことがわかるもの(掲示物・配布文書・説明会の記録)
- 加算の交付額がわかるもの(国保連からの支払決定通知など)
指摘されやすいところ
賃金台帳と実績報告の額が合わない
いちばん多い形です。原因はたいてい集計の取りこぼしで、年度途中で退職した職員が名簿から外れている、兼務者の按分が途中で変わっている、賞与が別のファイルにあって足し忘れている、といったものです。どれも金額の計算ではなく、集める範囲の問題です。
加算と関係のない手当が混ざっている
加算とは無関係に元から払っていた手当を賃金改善額に含めていると、賃金改善として説明できません。手当の種別を分けて記録しておけば、この切り分けで悩みません。逆に、すべてを1つの手当にまとめていると、どこまでが加算由来かを後から示せなくなります。
規程に手当の定めが無い
実際に払っていても、賃金規程に根拠が無ければ「制度として整備されている」とは言えません。加算の新設や区分変更にあわせて規程を直さないまま運用が先行している、という形がよくあります。
周知を証明できない
説明はしたが記録が無い、というパターンです。やっていないのと同じ扱いになりかねないので、掲示した写真や配布文書の控えを残してください。
研修を計画で終えている
キャリアパス要件には資質向上の計画と研修の実施が含まれます。計画だけあって実施記録が無いと、満たしていることを示せません。参加者名簿と実施日が分かる形で残します。
不備が見つかったとき
運営指導で不備を指摘されると、改善報告を求められます。賃金改善額が加算額を下回っていた場合は、差額の返還を求められるのが原則です。金額は事業所の規模によっては数十万円から数百万円の桁になります。
ここで効いてくるのが普段の記録です。毎月、加算の取得額と支給額を突き合わせていれば、年度の途中で不足に気づけます。気づいた時点であれば賞与で埋めるという手段が残っています。運営指導で初めて知る状況になると、打てる手はもうありません。
通知が来る前にできること
- 年度が終わったら、その年度の一式(計画書・実績報告・賃金台帳・規程・研修記録)をまとめて保管する
- 手当は種別を分けて記録し、加算由来かどうかが後から分かる状態にしておく
- 規程を直したら、いつから適用したかを残す(改定履歴)
- 研修・職場環境等要件の取組は、実施のたびに記録する(年度末にまとめて思い出すのは難しい)
- 毎月、加算額と支給額の差を確認する(不足に早く気づくため)
どれも運営指導のためだけの作業ではありません。年度末の実績報告でそのまま使うものなので、普段の運用に組み込めば二度手間になりません。