事業所が増えたときの処遇改善加算の管理 — 法人全体と事業所ごとを両方見る

事業所が1つなら、加算の管理は1枚の表で足ります。3つを超えたあたりから、同じやり方では続かなくなります。原因は作業量ではなく、事業所ごとに違う前提を1枚の表では表現できないことにあります。

運用

実績報告は事業所ごとに出す

まず押さえておくべき点として、処遇改善加算の実績報告は事業所ごとに求められます。法人全体の合計で配りきっていても、事業所単位で見て不足している事業所があれば、その事業所について不足として扱われます。

つまり、ある事業所で多く配った分を、別の事業所の不足を埋めるために使うことはできません。事業所ごとに、交付された額の範囲で配るという対応関係を保つ必要があります。法人の合計だけを見ていると、この状態に気づけません。

事業所ごとに違うもの

1枚の表では表現しにくくなる要素
要素事業所ごとに違う理由
加算区分要件の満たし方が事業所ごとに異なる。上位区分を取れる事業所とそうでない事業所がある
サービス種別と加算率同じ法人でも訪問介護と通所介護では加算率が違う
加算の対象かどうか訪問看護や居宅介護支援は対象外。同じ法人内に対象と対象外が混在する
支給月のずれ給与の締め日・支給日が事業所によって違うことがある
社会保険料率事業所が別の都道府県にあれば健康保険料率が違う
算定を始めた時期途中で開設した事業所は、年度の一部だけが対象になる
職員の兼務複数の事業所を兼務する職員の按分が必要になる

表計算で管理すると、これらをシートの数で表現することになります。事業所が5つあれば5枚、サービス種別で分ければさらに増えます。シートが増えること自体は問題ではなく、問題は次の2つです。

シートが増えると起きる2つの問題

1. 合計の式が壊れていても気づかない

法人全体の数字は、各シートを参照した合計で出します。事業所を1つ追加したときに合計の式へ加えるのを忘れると、その事業所が丸ごと法人の数字から抜けます。抜けていることは、金額を見ても分かりません。数字は出ているからです。

この間違いが見つかるのは、たいてい実績報告の提出前です。事業所ごとの報告を作っているときに「法人の合計と足し上げが合わない」と気づきます。年度末のいちばん時間のない時期に、原因を探すことになります。

2. 前提の修正が全シートに波及する

料率が改定された、法定福利費の計算方法を見直した、支給月のずれの扱いを変えた。こうした修正は、すべてのシートに同じ修正を入れることになります。1枚でも漏れれば、その事業所だけ古い前提で計算されます。

5枚のうち1枚を直し忘れたとき、間違っているのはどのシートかを探す手段がありません。全部を開いて見比べることになります。

必要なのは「同じ計算を、違う設定で回す」形

事業所が増えても作業が増えない形にするには、計算の手順と事業所ごとの設定を切り離す必要があります。

  • 計算の手順(加算額と支給額の突き合わせ、法定福利費の算出)は1つだけ持つ
  • 事業所ごとに違うもの(加算区分、加算率、料率、支給月のずれ)は設定として持つ
  • 法人全体の数字は、事業所の数字を集めて出す。手で足し上げない
  • 事業所を追加したら、設定を1件足すだけで法人の数字に入る

この形になっていれば、料率の改定は1か所の修正で全事業所に反映され、事業所の追加で合計の式を直す必要がありません。事業所が3つでも20でも、年度末の作業量が変わらないというのが目標です。

法人全体と事業所ごとを同時に見る

管理する立場では、見たいものが2つあります。法人全体で年度の進捗がどうなっているかと、どの事業所に問題があるかです。

2つの見方の役割
見るもの何を判断するか
法人全体の年度サマリー今年度の配分設計が妥当だったか。賞与での調整が必要か
事業所ごとの内訳どの事業所が不足しているか。原因が配分かずれか
職員ごとの内訳配分が設計どおりになっているか。抜けている職員がいないか

実務では、まず法人全体で進捗を見て、ずれが大きければ事業所ごとに降りて原因を探す、という順序になります。この2段階が同じ数字の上でできるかどうかが、複数事業所の管理が続くかどうかの分かれ目です。別々に集計していると、降りた先の数字が全体と合いません。

事業所が増えるときに確認すること

  1. 新しい事業所のサービス種別が加算の対象かどうかを確認する
  2. 算定する加算区分と加算率を確認する
  3. 算定の開始月を記録する(年度の途中なら、その月からの集計になる)
  4. 給与の締め日・支給日が既存の事業所と同じかを確認する
  5. 社会保険料率が既存の事業所と同じかを確認する(都道府県が違えば変わる)
  6. 兼務する職員がいるなら、按分の方法を決める
  7. 法人全体の集計に、その事業所が入ったことを確認する

最後の項目を必ず入れてください。追加したつもりで入っていない、というのが複数事業所の管理でもっとも起きやすく、もっとも気づきにくい間違いです。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。