実績報告は事業所ごとに出す
まず押さえておくべき点として、処遇改善加算の実績報告は事業所ごとに求められます。法人全体の合計で配りきっていても、事業所単位で見て不足している事業所があれば、その事業所について不足として扱われます。
つまり、ある事業所で多く配った分を、別の事業所の不足を埋めるために使うことはできません。事業所ごとに、交付された額の範囲で配るという対応関係を保つ必要があります。法人の合計だけを見ていると、この状態に気づけません。
事業所ごとに違うもの
| 要素 | 事業所ごとに違う理由 |
|---|---|
| 加算区分 | 要件の満たし方が事業所ごとに異なる。上位区分を取れる事業所とそうでない事業所がある |
| サービス種別と加算率 | 同じ法人でも訪問介護と通所介護では加算率が違う |
| 加算の対象かどうか | 訪問看護や居宅介護支援は対象外。同じ法人内に対象と対象外が混在する |
| 支給月のずれ | 給与の締め日・支給日が事業所によって違うことがある |
| 社会保険料率 | 事業所が別の都道府県にあれば健康保険料率が違う |
| 算定を始めた時期 | 途中で開設した事業所は、年度の一部だけが対象になる |
| 職員の兼務 | 複数の事業所を兼務する職員の按分が必要になる |
表計算で管理すると、これらをシートの数で表現することになります。事業所が5つあれば5枚、サービス種別で分ければさらに増えます。シートが増えること自体は問題ではなく、問題は次の2つです。
シートが増えると起きる2つの問題
1. 合計の式が壊れていても気づかない
法人全体の数字は、各シートを参照した合計で出します。事業所を1つ追加したときに合計の式へ加えるのを忘れると、その事業所が丸ごと法人の数字から抜けます。抜けていることは、金額を見ても分かりません。数字は出ているからです。
この間違いが見つかるのは、たいてい実績報告の提出前です。事業所ごとの報告を作っているときに「法人の合計と足し上げが合わない」と気づきます。年度末のいちばん時間のない時期に、原因を探すことになります。
2. 前提の修正が全シートに波及する
料率が改定された、法定福利費の計算方法を見直した、支給月のずれの扱いを変えた。こうした修正は、すべてのシートに同じ修正を入れることになります。1枚でも漏れれば、その事業所だけ古い前提で計算されます。
5枚のうち1枚を直し忘れたとき、間違っているのはどのシートかを探す手段がありません。全部を開いて見比べることになります。
必要なのは「同じ計算を、違う設定で回す」形
事業所が増えても作業が増えない形にするには、計算の手順と事業所ごとの設定を切り離す必要があります。
- 計算の手順(加算額と支給額の突き合わせ、法定福利費の算出)は1つだけ持つ
- 事業所ごとに違うもの(加算区分、加算率、料率、支給月のずれ)は設定として持つ
- 法人全体の数字は、事業所の数字を集めて出す。手で足し上げない
- 事業所を追加したら、設定を1件足すだけで法人の数字に入る
この形になっていれば、料率の改定は1か所の修正で全事業所に反映され、事業所の追加で合計の式を直す必要がありません。事業所が3つでも20でも、年度末の作業量が変わらないというのが目標です。
法人全体と事業所ごとを同時に見る
管理する立場では、見たいものが2つあります。法人全体で年度の進捗がどうなっているかと、どの事業所に問題があるかです。
| 見るもの | 何を判断するか |
|---|---|
| 法人全体の年度サマリー | 今年度の配分設計が妥当だったか。賞与での調整が必要か |
| 事業所ごとの内訳 | どの事業所が不足しているか。原因が配分かずれか |
| 職員ごとの内訳 | 配分が設計どおりになっているか。抜けている職員がいないか |
実務では、まず法人全体で進捗を見て、ずれが大きければ事業所ごとに降りて原因を探す、という順序になります。この2段階が同じ数字の上でできるかどうかが、複数事業所の管理が続くかどうかの分かれ目です。別々に集計していると、降りた先の数字が全体と合いません。
事業所が増えるときに確認すること
- 新しい事業所のサービス種別が加算の対象かどうかを確認する
- 算定する加算区分と加算率を確認する
- 算定の開始月を記録する(年度の途中なら、その月からの集計になる)
- 給与の締め日・支給日が既存の事業所と同じかを確認する
- 社会保険料率が既存の事業所と同じかを確認する(都道府県が違えば変わる)
- 兼務する職員がいるなら、按分の方法を決める
- 法人全体の集計に、その事業所が入ったことを確認する
最後の項目を必ず入れてください。追加したつもりで入っていない、というのが複数事業所の管理でもっとも起きやすく、もっとも気づきにくい間違いです。