年に1回の報告のために、12回の記録がいる
処遇改善加算の実績報告で必要になるのは、年度の合計額だけではありません。加算額は利用実績によって毎月変わり、加算区分の変更や職員の入退職も年度の途中で起きます。合計だけを持っていても、なぜその金額になったのかを説明できなければ、指導の場で答えられません。
そして何より、年度末に不足が分かっても手遅れです。年度内なら賞与での補填という手段がありますが、年度が終わってしまえば選べません。月次で見る目的は事務の効率化ではなく、打つ手が残っているうちに気づくことにあります。
毎月やることは3つだけ
1. その月の加算取得額を記録する
事業所ごと、加算区分ごと、サービス種別ごとに記録します。同じ加算区分を複数のサービスで算定している場合は、分けて持ってください。まとめてしまうと、あとからサービス別に分解できません。金額は国保連の支払決定通知など、確定したものを使います。
2. その月に職員へ配った額を記録する
給与計算が終わった時点で、処遇改善加算を原資とした手当の合計を記録します。手当の種別ごとに内訳を持っておくと、実績報告のときに「加算由来かどうか」で悩まずに済みます。時給者は単価×時間で決まるため、月ごとの変動も一緒に記録します。
3. 差額を確認する
加算取得額から、支給額と法定福利費の事業主負担増加分を引きます。プラスなら余剰、マイナスなら不足です。ここで見るのは単月の差額ではなく、年度の累計であることに注意してください。単月では月ごとの凸凹が大きく、判断材料になりません。
なぜ毎月ぴったり合わないのか
加算取得額は利用者の利用実績に連動して動きます。一方、職員に払う手当は固定額であることが多く、月ごとの変動がありません。動くものと動かないものを突き合わせているので、毎月ぴったり一致するほうが不自然です。
- 利用者数や利用回数が減れば、加算取得額も減る
- 職員が退職すれば支給額は減るが、加算取得額はすぐには変わらない
- 加算区分が変われば、その月から加算率が変わる
- 社会保険の料率改定は年度の途中(例年3月分から)に入る
だからこそ、合わせにいくのは単月ではなく年度累計です。単月の過不足に反応して手当を上げ下げすると、職員の賃金が毎月動くことになり、賃金改善としての説明も難しくなります。
賞与で補填するなら、いつ判断するか
不足を賞与で埋める場合、支給日から逆算して判断の期限が決まります。賞与の対象者・金額を決め、給与計算に乗せるには、支給月の1〜2か月前には方針を固める必要があります。
| 時期 | 見るもの | 判断 |
|---|---|---|
| 9〜10月 | 上半期(4〜9月)の累計過不足 | 冬の賞与で埋める額の見当をつける |
| 11月 | 冬の賞与の原案 | 対象者と金額を確定し、給与計算へ |
| 1月 | 4〜12月の累計過不足 | 年度末までに残る不足額を試算する |
| 2月 | 年度末賞与の原案 | 最後の調整。ここを過ぎると年度内には配れない |
| 4〜6月 | 確定した12か月分 | 実績報告の集計(この時点では調整できない) |
事業所が複数あるとき
加算は事業所単位で算定され、報告も事業所ごとに求められます。したがって過不足も事業所ごとに見る必要があります。法人全体で合計すれば足りていても、事業所Aが余剰、事業所Bが不足という状態は、そのままでは説明できません。
同一法人内での事業所間の取り扱いは、申請の方法(一括か個別か)によって変わります。どこまで融通できるかは指定権者の通知に従ってください。いずれにせよ、まず事業所ごとの数字が見えていなければ判断できません。法人合計だけを持っている状態が、いちばん危険です。
事業所が3か所を超えたあたりから、表計算ソフトでの管理は破綻しはじめます。事業所 × 職員 × 12か月という3つの軸を、1枚のシートで表せないためです。
月次運用の型
- 給与計算が終わったら、その月の支給額を記録する(担当:給与担当)
- 国保連の支払決定通知が届いたら、その月の加算取得額を記録する(担当:請求担当)
- 両方そろったら、年度累計の過不足を確認する(担当:管理者)
- 不足が続いているなら、次の賞与でいくら埋めるかを試算しておく
- 年度末に、12か月分の集計をそのまま実績報告の様式へ
この型の要点は、記録する人と確認する人を分けても成立することです。給与担当と請求担当は元々別の人であることが多く、その2つを毎月1か所に集めておくだけで、年度末の作業は集計を出力するだけになります。