処遇改善加算の金額はどう計算されるか — 単位数・加算率・地域単価の3段階

処遇改善加算は「職員1人あたりいくら」で決まる加算ではありません。事業所がその月に請求した介護報酬の総額に、一定の率を掛けて決まります。この仕組みを知らないまま配分を決めると、利用者が減った月に原資が足りなくなります。

制度

計算は3段階で進む

処遇改善加算の額は、次の順番で計算されます。どの段階も請求ソフトが自動で行いますが、どこで何が掛かっているかを知っておくと、加算額の増減を説明できるようになります。

加算額の計算の流れ
段階計算中身
11か月の総単位数を出す基本サービス費に、各種の加算・減算を反映した単位数の合計
2総単位数 × 加算率処遇改善加算の単位数。1単位未満は四捨五入
3加算の単位数 × 地域区分の単価円に直す。単価は地域区分とサービスの種類で決まる

加算率はサービスの種類と加算の区分(Ⅰ〜Ⅳ)で決まります。同じ区分でも、訪問介護と通所介護と施設サービスでは率が違います。率は改定のたびに変わるので、必ずその年度の通知で確認してください。

具体的な数字で見る

仮の数字で一度追ってみます。加算率と単価は説明のための値です。

計算例(数字は説明用の仮の値)
項目値
1か月の総単位数200,000単位
加算率20.0%
処遇改善加算の単位数40,000単位
地域区分の単価10.70円
処遇改善加算の額428,000円

この事業所では、毎月およそ43万円が処遇改善の原資になります。年間ではおよそ510万円です。職員への配分は、この金額を上回るように組む必要があります(実際には法定福利費の増加分なども含めて判断します)。

加算額が毎月変わる理由

加算は総単位数に率を掛けて決まるので、総単位数が動けば加算も動きます。総単位数が動く主な原因は次のとおりです。

  • 利用者数の増減(入院・退所・新規契約)
  • 利用回数や要介護度の変化
  • 他の加算の算定状況(体制加算を取り始めた、要件を満たさなくなった)
  • 月の日数や営業日数の違い

一方、職員に払う手当は毎月定額であることがほとんどです。入ってくる額は変動し、出ていく額は固定という構造なので、月単位で見ると過不足が出るのは当然です。過不足は年度を通して判断します。

区分支給限度基準額の外にある

居宅サービスでは、処遇改善加算は区分支給限度基準額の計算に含めません。利用者が限度額いっぱいまでサービスを使っていても、加算の分で限度額を超えることはありません。

ただし利用者負担はあります。加算の額にも1〜3割の自己負担がかかるので、加算の区分を上げると利用者の請求額も上がります。区分を変えるときは、利用者への説明もあわせて準備しておきます。

配分の予算は前年度の実績から立てる

年度初めに配分を決めるとき、その年度の加算額はまだ分かりません。見込みは前年度の実績から立てるのが確実です。

  1. 前年度の各月の加算額(確定額)を12か月分並べる
  2. 利用者数の増減の見込みを反映する(新規開設・定員変更があれば必ず)
  3. 加算率が変わる場合は、新しい率で引き直す
  4. 月平均ではなく、少なめの月を基準に毎月の手当額を決める
  5. 残りを年度末の調整(賞与・一時金)に回す

経営者として押さえておく3つの数字

加算の計算を毎月追う必要はありませんが、経営者として次の3つの数字は年度初めに把握しておくべきです。どれも前年度の請求実績から出せます。

年度初めに把握する数字
数字何に使うか
年間の加算見込額賃金改善に充てる総額の下限。これを下回る配分計画は返還につながる
加算額がもっとも少ない月の額毎月の固定的な手当の上限を決める目安
利用者1人あたりの月の加算額利用者が1人減ったときに原資がいくら減るかの感覚をつかむ

3つ目は見落とされがちですが重要です。たとえば利用者1人あたり月8,000円の加算が付いている事業所で、年度の途中に利用者が5人減れば、原資は月4万円、年間で48万円減ります。稼働率の見通しが厳しい年は、手当を上げる前に原資の減り方を試算しておくことが、持ち出しを防ぐ一番の手段です。

逆に、新規開設や定員増で利用者が増える見込みがある年は、加算も増えます。増えた分を年度末にまとめて配るのか、途中で手当を上げるのかを先に決めておくと、職員への説明がぶれません。

社労士が顧問先で確認すること

顧問先の配分計画を見るとき、加算額そのものの数字がどこから来ているかを確認すると、計画の土台の誤りを早く見つけられます。

  • 加算額は請求額ではなく、国保連の決定通知による確定額で見ているか(返戻・過誤で後から減った分が反映されているか)
  • 加算率を前年度のまま使っていないか(改定の年は率が変わる)
  • 地域区分の単価は正しいか(地域区分は報酬改定にあわせて見直されることがある)
  • 複数のサービスを運営している場合、サービスごとに異なる加算率で計算しているか
  • 総単位数に含まれていない加算・減算を手作業で足し引きしていないか

よくある質問

加算額は職員の人数で決まるのですか

人数では決まりません。事業所が請求した総単位数に加算率を掛けて決まるので、職員を増やしても加算は増えません。利用者へのサービス提供が増えたときに増えます。職員1人あたりの配分額は、加算額を職員数で割った結果として決まるものです。

処遇改善加算の分も利用者から1割負担をもらうのですか

もらいます。処遇改善加算も介護報酬の一部なので、利用者の負担割合に応じた自己負担が発生します。区分支給限度基準額の計算には含めませんが、利用者の請求額には反映されます。

年度の途中で加算率が変わることはありますか

報酬改定や臨時の改定が年度の途中に実施されることがあります。その場合は改定の月から新しい率で計算されるので、配分の見込みもその月から引き直します。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。