3つの金額は一致しない
加算の額には、段階の違う3つの金額があります。これを区別せずに1つの列で管理すると、どの段階の金額なのかが分からなくなります。
| 金額 | 時期 | 性質 |
|---|---|---|
| 請求額 | サービス提供月の翌月 | 事業所が国保連へ請求した額。この時点では見込み |
| 決定額(確定額) | 翌々月 | 審査を経て支払が決定した額。実績報告で使う |
| 入金額 | 翌々月 | 決定額から過誤調整などを差し引いて振り込まれた額 |
実績報告で使うのは決定額です。請求額を使うと、返戻があった分だけ多く計上します。入金額を使うと、過去の月の過誤調整が混ざって、その月の加算額ではなくなります。
なぜずれるのか
返戻
請求の内容に不備があると返戻になり、その分は決定額に入りません。翌月以降に再請求して通れば、別の月の決定額として入ります。4月分の加算が返戻になり6月に再請求して通った場合、金額としては4月のサービスに対するものですが、決定の時期は後ろにずれます。
実績報告では、サービス提供月で整理するのか決定の時期で整理するのかを決めて、年度を通して同じ扱いにしてください。年度の端で再請求が発生していると、どちらで整理するかによって年度の合計が変わります。
過誤調整
過去の請求を取り下げて再請求する場合、過誤調整として処理されます。入金額からはその分が差し引かれるため、入金額だけを見ていると、その月の加算が少なく見えます。加算の管理表に入金額を書いていると、実際には交付されている額を不足として扱うことになります。
会計上の扱い
処遇改善加算は補助金ではなく介護報酬の一部です。したがって収益として計上し、職員へ支給した手当は人件費として計上します。加算のために別の勘定を立てる必要はありませんが、加算の額が後から分かる形にしておく必要があります。
- 介護保険事業収益のうち、処遇改善加算がいくらだったかを把握できるようにする
- 補助金収入として処理しない(介護報酬の一部であるため)
- 職員への支給は人件費。処遇改善の手当を他の手当と区別できる科目または補助科目にする
- 法定福利費の事業主負担も人件費。賃金改善に伴う増加分を後から計算できるようにする
- サービス提供月と入金月が違うため、未収計上のタイミングを決めておく
実務上の要点は3番目です。処遇改善の手当を他の手当と同じ科目にまとめてしまうと、年度末に賃金改善額を出すために給与明細を1件ずつ見ることになります。手当の種類として分けておけば、集計するだけで済みます。
未収計上と加算の管理をそろえる
会計では、サービスを提供した月に未収金として計上し、入金された月に消し込む処理をします。つまり会計はサービス提供月で整理しています。
一方、加算の管理表が入金月で作られていると、会計と2か月ずれます。年度末に突き合わせたとき、会計上の加算収益と管理表の加算額が一致しません。どちらかが間違っているように見えますが、どちらも間違っていません。整理している軸が違うだけです。
この食い違いを避けるには、加算の管理もサービス提供月で整理してください。そのうえで、職員への支給が何か月後になるかを別に持ちます。整理の軸を会計とそろえておけば、年度末の突き合わせが検算として機能します。
経理と加算の担当が別の場合
多くの法人では、国保連からの入金を見ているのは経理、加算の配分を考えているのは人事または管理部門です。このとき、決定額の情報が加算の担当へ届く経路が必要です。
- 支払決定通知が届いたら、処遇改善加算の決定額を記録する担当を決める
- 返戻・過誤調整があった月は、その旨も記録する
- 記録した額を、加算の管理と会計の両方が参照できる場所に置く
- 月次で、会計上の加算収益と管理表の加算額を突き合わせる
4番目を月次でやっておくと、ずれが出た月にその場で原因を特定できます。年度末にまとめて突き合わせると、12か月のどこでずれたのかを遡ることになります。
経営者として見ておくこと
処遇改善加算は、法人の売上の中でも使い道が決まっている収入です。通常の介護報酬と同じように運転資金として扱っていると、年度末に一時金を払う段階で、その分の現金が手元にないということが起こります。
特に年度末の一時金でまとめて精算する運用の事業所では、加算の入金から支給までに数か月の間があります。その間に加算の分を他の支払いに使ってしまうと、一時金の支給時期に資金が足りなくなります。
- 加算の入金額と職員への支給額の差(未配分の残高)を月次で把握する
- 未配分の残高に見合う現金を、年度末まで確保しておく
- 月次の試算表で、加算の収益と処遇改善の人件費を他と分けて確認できるようにする
会計上は加算を他の介護報酬と区別する必要がなくても、管理会計では加算と処遇改善の人件費を対にして見ると、経営者が過不足の状況を毎月つかめるようになります。
社労士・税理士と連携して確認すること
- 実績報告で使う加算の額が、国保連の決定額と一致しているか(請求額のままになっていないか)
- 返戻・過誤調整で後から増減した分が、正しい年度に計上されているか
- 会計上の加算収益と、加算の管理表の額が月次で一致しているか
- 給与計算で処遇改善の手当を他の手当と区別して集計できるか
加算の金額は会計(税理士)、賃金の支給は給与計算(社労士)と、確認する専門家が分かれていることがよくあります。実績報告の前に、両者の数字を一度突き合わせる機会を作っておくと、報告書の金額の根拠がはっきりします。