実績報告書は「使い切ったことの証明」
処遇改善加算は、事業所の努力に報いるための上乗せではありません。受け取った額を職員の賃金に回すことを条件に交付される加算です。そのため年度が終わったら、その年度に実際に受け取った加算額と、実際に職員へ配った賃金改善額を並べ、後者が前者を下回っていないことを指定権者(都道府県または市町村)へ報告します。これが実績報告書です。
提出期限は、原則として加算を算定した年度の終了後2か月以内、つまり翌年度の7月末日とされています。ただし様式も提出方法も指定権者ごとに異なり、電子申請に切り替わっている自治体もあります。毎年、自分の指定権者が出す通知を必ず確認してください。
そろえる5つの数字
1. 加算の収入額(実績)
算定した加算区分について、月ごとに実際に交付された額です。国保連からの支払決定通知など、確定した金額から拾うのが確実です。計画時の見込み額ではありません。加算額は利用者の利用実績に連動して総単位数が動くため、見込みと実績は必ずずれます。見込みのまま報告すると、そもそも突き合わせの土台が違うことになります。
2. 職員へ支給した賃金改善額(月次)
処遇改善加算を原資として毎月支払った分です。基本給の引き上げ分、処遇改善手当のような固定額の手当、時給への上乗せなどが該当します。ここで大切なのは、加算とは関係なく元から支払っていた手当を混ぜないことです。混ぜれば見かけ上は足りますが、賃金改善として説明できません。手当の種別を分けて記録しておけば、この切り分けで悩まずに済みます。
3. 一時金(賞与)による支給額
月次の手当だけでは使い切れない分を、年度内の賞与でまとめて配る運用は一般的です。加算額は利用実績で動くため、毎月の手当だけでぴったり合わせることは実際には困難だからです。ただし加算には月額賃金の改善に一定割合以上を充てる要件があるため、全額を賞与に寄せることはできません。
4. 賃金改善に伴って増えた法定福利費の事業主負担分
賃金を上げれば、事業主が負担する社会保険料等も増えます。この増加分は賃金改善額に含めることができます。金額は賃金改善額のおおむね15%台後半になるため、含めるかどうかで結論が変わることがあります。入れ忘れれば、実際より少なく報告することになります。
5. 対象職員の人数と内訳
常勤・非常勤の別、職種、対象人数です。年度途中の入職者・退職者も含めて、誰にいくら配ったかを説明できる状態にしておきます。実地指導で確認されるのは合計額だけではなく、その内訳が賃金台帳と一致するかどうかです。
つまずきやすいところ
加算は事業所ごと、支給は職員ごと
加算は事業所(介護サービス事業所・施設)単位で算定されますが、手当は職員に対して支払われます。ある職員が複数の事業所を兼務していると、その職員への支給額をどの事業所の実績に載せるかを決めなければなりません。決め方そのものに唯一の正解はありませんが、按分の根拠(勤務時間の比率など)を年度を通して一貫させ、記録に残しておくことが重要です。年度の途中で数え方を変えると、合計は合っても事業所ごとの数字が説明できなくなります。
年度の途中で加算区分が変わった
上位区分への変更や、経過措置区分からの移行があると、月によって加算率が変わります。年度合計を「年間の総単位数 × 最後の加算率」で概算すると合いません。月ごとに積み上げるしかなく、この積み上げを年度末にまとめてやろうとすると、12か月分の資料を探すところから始めることになります。
退職者が集計から落ちる
年度の途中で退職した職員に支給した賃金改善額も、その年度の実績に含まれます。ところが職員名簿から退職者を削除する運用にしていると、集計から丸ごと落ちます。落ちた分は「配っていない額」として扱われ、不足しているように見えます。在職者だけを見る画面と、年度の集計に使う画面は別物だと考えてください。
不足が分かったときにできること
実績報告の作業中に不足が分かっても、年度はすでに終わっています。年度内であれば賞与での補填という手段がありますが、報告の段階では選べません。不足のまま報告すれば、差額の返還を求められるのが原則です。しかも金額は月数千円という話ではなく、事業所の規模によっては数十万円から数百万円の桁になります。
提出前チェックリスト
- 加算の収入額は、見込みではなく確定した交付額を使っているか
- 4月から翌3月まで、12か月分がそろっているか
- 賃金改善に伴って増えた法定福利費の事業主負担分を含めたか
- 年度途中の入職者・退職者を含めたか
- 兼務者の按分の根拠を、年度を通して一貫した基準で説明できるか
- 加算と関係のない既存手当を賃金改善額に混ぜていないか
- 賃金台帳の金額と、報告する支給額が一致するか
- 指定権者の様式・提出方法・締切を今年度分で確認したか