年収440万円以上の職員を置く要件 — 加算Ⅰ・Ⅱで求められることと、満たせないときの考え方

加算Ⅰ・Ⅱを取るための要件のなかで、もっとも金額の負担が重く見えるのが「年収440万円以上の職員を1人以上」という要件です。誰の年収で、何を含めて数えるのかを正確に押さえると、思っていたより手の届く要件であることも、逆に届かないことも早めに分かります。

制度

要件の中身

加算Ⅰ・Ⅱの算定にあたっては、経験・技能のある介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であることが求められます。年度の途中で達成すればよいのではなく、賃金改善を実施する期間の年額として見込めることが前提です。

要件の細部や例外の扱いは通知で定められており、改定で変わることがあります。ここでは考え方を整理しますが、算定の判断は必ずその年度の通知とQ&Aで確認してください。

「経験・技能のある介護職員」とは誰か

基本となる考え方は、介護福祉士の資格を持ち、勤続年数がおおむね10年以上の介護職員です。ただし勤続10年は目安であり、他の法人での経験も含めるなど、事業所の裁量で基準を設定できます。

  • 基準は事業所で決め、計画書と職員への説明で同じものを使う
  • 基準を満たす職員が誰かを名簿で特定しておく
  • 年収440万円以上となる職員は、その基準を満たす職員の中から選ぶ

基準を広く取れば候補者は増えますが、経験や技能の裏付けがない人を対象にすると運営指導で説明できません。資格・経験年数・役割の3点で基準を言葉にしておくことが大切です。

年収に何を含めるか

年額440万円の判定に含めるかどうか(目安)
項目扱い
基本給含める
処遇改善手当・資格手当など毎月の手当含める
賞与・一時金含める
時間外手当・夜勤手当含めて判定する考え方が示されているが、扱いは通知で確認する
法定福利費の事業主負担含めない(職員の受け取る賃金で判定する)

ポイントは、事業主負担の社会保険料を足して440万円にしてはいけないことです。人件費として法人が払っている額ではなく、職員本人の賃金の年額で判定します。

小規模で満たせないとき

職員数が少ない事業所や、加算の額そのものが小さい事業所では、1人を440万円に引き上げるための原資が足りないことがあります。こうした場合について、通知では合理的な説明ができれば要件を満たさなくてもよい例外が示されています。

  • 小規模な事業所で、加算の額が少なく1人の賃金を引き上げることが困難
  • 職員全体の賃金水準が低く、直ちに1人だけ高い賃金にすると不均衡が大きい
  • 440万円まで引き上げるには、定期昇給なども含めて段階的な改善が必要

例外を使う場合は、なぜ満たせないのかを計画書で具体的に説明することになります。「難しい」だけでは足りず、加算の見込額と職員の賃金水準を示して、引き上げられない理由を数字で書けるようにしておきます。

法人内のどの事業所に置くか

複数の事業所がある法人では、どの事業所にその職員がいるかも問題になります。要件は事業所ごとに満たす考え方が基本なので、法人に1人いれば全事業所で満たせるとは限りません。

経営者として考えること

この要件は、単に1人の賃金を上げればよいというものではありません。誰を440万円にするかは、法人の中でその人をどう位置付けるかという人事の判断です。

  • リーダー職やサービス提供責任者など、役割と結び付けて引き上げると、他の職員にも理由が伝わりやすい
  • 特定の1人だけを突出させると、同じ程度の経験を持つ職員の不満につながる
  • 対象者が退職すると要件を満たせなくなるので、候補者を複数育てておく

特に最後の点は経営上のリスクです。対象者が1人しかいない状態で年度の途中に退職されると、その年度の加算Ⅰ・Ⅱの要件を満たせなくなるおそれがあります。440万円に届く職員を2人以上確保できる賃金体系を目標にしておくと、退職が出ても区分を維持できます。

また、440万円という水準は、介護職として長く働き続けられる賃金の目安としても示されています。この水準の職員がいることを求人で示せれば、経験者の採用にも効きます。要件を満たすための負担としてではなく、キャリアの到達点を見せる手段として使うと、加算の効果を採用にも生かせます。

社労士が顧問先で確認すること

  1. 「経験・技能のある介護職員」の基準が文書で定められ、計画書と一致しているか
  2. 440万円の見込額に、事業主負担の法定福利費が含まれていないか
  3. 見込額が年度途中の入職や休職で年額に届かなくなっていないか
  4. 例外を使う場合、計画書に具体的な理由が書かれているか
  5. 事業所ごとに要件を満たしているか(法人全体の名簿だけで判断していないか)

440万円の見込額は年度初めの見込みで判断しますが、年度の途中で賞与の支給額が変わると、実績が見込みを下回ることがあります。年度の後半に一度、対象者の賃金の実績と見込みを突き合わせるよう顧問先に促しておくと、年度末に要件を満たしていなかったことが判明する事態を防げます。

よくある質問

440万円には夜勤手当や残業代も含まれますか

含めて判定する考え方が示されていますが、細かい扱いは通知とQ&Aで確認してください。いずれにしても、職員本人に支払う賃金で判定し、事業主負担の社会保険料は含めません。

対象者が年度の途中で退職したらどうなりますか

年度の途中で対象者がいなくなると、要件を満たせなくなるおそれがあります。他の職員で要件を満たせないか、例外の扱いに該当しないかを早めに確認し、必要に応じて指定権者に相談してください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。