処遇改善加算の残額を一時金で配る — 金額の出し方・支給時期・社会保険料の扱い

毎月の手当だけで加算額を使い切るのは難しく、多くの事業所が年度末に残額を一時金で配っています。ただ、一時金は「余ったから払う」で済むものではありません。金額の見積もりが甘いと不足が残り、支給が遅れると賃金改善に数えられず、社会保険料の届出を忘れると別の問題が起きます。

実務

なぜ一時金での精算が必要になるのか

加算の入金額は、毎月のサービス提供の実績で決まります。利用者の増減や入院、職員の入退職で、年度の初めに立てた見込みとは必ずずれます。毎月の手当を見込みいっぱいに設定すると、加算が少なかった年に手当が加算額を上回り、持ち出しになります。そのため月額の手当は控えめに設定し、年度末に残額を一時金で精算する運用が一般的です。

ただし、月額賃金改善要件があるため、すべてを一時金に寄せることはできません。一時金はあくまで、月額で払った分との差額を埋める手段です。

一時金の金額を見積もる

一時金の金額は、年度の加算見込額から、すでに払った賃金改善額と、これから払う予定の賃金改善額を引いて出します。

一時金の見積もり(例)
項目金額見方
年度の加算見込額1,200万円入金済みの分+残りの月の見込み
支給済みの賃金改善額(手当)650万円4月から支給月までの実績
残りの月に払う手当の見込み330万円在籍者が変わらない前提
法定福利費の増加分150万円支給済み・支給予定の両方に対応する分
一時金に充てる額70万円見込額との差。ここから一時金の法定福利費も賄う

見込みが外れた場合に備えて、加算見込額は少し低めに置き、残った分を翌年度に持ち越さず使い切れる余地を残すのが安全です。年度が終わってから不足に気づいても、後から払って埋めることはできません。

支給時期は賃金改善実施期間の中に

一時金が賃金改善に数えられるのは、計画書で定めた賃金改善実施期間の中で支給した場合です。加算の入金が2か月遅れることに合わせて、実施期間を6月から翌年5月などにずらしている事業所もあります。自社の実施期間の最終月がいつかを確認し、その月の給与または賞与として支給します。

  • 実施期間の最終月に支給するなら、その前月までに金額を確定させる
  • 最終月の入金額は確定していないことが多いので、国保連の決定通知から見込む
  • 退職予定者がいる場合、支給日に在籍しているかで扱いが変わるので、規程の在籍要件を確認する

社会保険料と源泉徴収の扱い

処遇改善の一時金は、名称にかかわらず、年3回以下の支給であれば社会保険上は賞与として扱われます。支給から5日以内に賞与支払届を年金事務所(健康保険組合)へ出す必要があります。所得税は賞与の源泉徴収税額の算出率の表で計算し、雇用保険料も控除します。

毎月の給与と同じ日に払う場合でも、年に1回の支給であれば賞与として扱うのが通常です。給与ソフトで給与の項目に入れてしまうと賞与支払届が漏れるので、賞与として処理するよう給与計算の担当者と事前にそろえておきます。

職員ごとにどう配るか

一時金の配り方は、月額の手当と同じ基準にそろえるのが説明しやすく、トラブルも少なくなります。よく使われるのは、年度中の勤務時間や在籍月数で按分する方法です。

一時金の配分方法と向いている場面
方法向いている場面注意点
在籍月数で按分常勤が中心の事業所短時間勤務の職員との差が大きくなりやすい
勤務時間で按分パートが多い事業所勤怠の集計がそろっていることが前提
月額の手当に比例手当に職種・資格の差をつけている手当の差がそのまま一時金にも出る
人事評価を反映評価制度が運用されている評価の根拠を説明できるようにしておく

支給した後にやること

一時金は払って終わりではありません。実績報告では、年度の賃金改善額に一時金を含めて報告するので、支給の記録を報告の数字につなげておく必要があります。

  1. 職員ごとの一時金の額と、事業主負担の増加分を集計表に記録する
  2. 賃金台帳(賞与の台帳)の金額と、集計表の金額が一致しているか確認する
  3. 最終月の加算の確定額が出たら、見込みとの差を確かめる
  4. 一時金の算定方法と支給額を、職員へ周知した記録を残す

最終月の確定額が見込みより多く、わずかに不足が残ることがあります。実施期間がまだ残っていれば追加で支給して埋められますが、期間が終わっていれば埋められません。見込みに少し余裕を持たせて多めに配っておくほうが、不足による返還より負担は小さく済みます。

経営者として気を付けること

一時金は、職員にとっては「年度末にもらえるもの」として定着しやすい支給です。金額が年によって大きく変わると、少なかった年に不満が出ます。毎年の一時金が大きいなら、それは月額の手当を上げられる余地があるという意味でもあります。一時金の金額を2〜3年分並べて見て、安定して残るぶんは月額に移すと、採用や定着の面でも伝わりやすくなります。

社労士が顧問先で確認すること

  • 一時金の支給日が賃金改善実施期間の中にあるか
  • 賞与支払届が期限内に出ているか、算定基礎に漏れがないか
  • 規程に一時金の在籍要件と算定方法が書かれているか
  • 一時金の法定福利費を含めて、差額を計算しているか
  • 一時金への依存が大きく、月額賃金改善要件を下回っていないか

よくある質問

一時金を年度をまたいで翌年度に払ってもよいですか

賃金改善実施期間を過ぎてから払った分は、その年度の賃金改善に数えられません。翌年度の賃金改善にも数えにくいので、実施期間の中で払い切るのが原則です。

退職した職員にも一時金を払う必要がありますか

規程で支給日在籍を条件にしていれば、払わない扱いもできます。ただし在籍期間の加算は退職者の勤務でも生まれているので、在籍月数で按分して払う事業所もあります。どちらにするかを規程で決め、毎年同じ扱いにしてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。