人事評価を処遇改善加算の配分に反映する — 差をつけるときの設計と、揉めないための手順

処遇改善加算を全員に同じ額で配ると、頑張っている職員ほど不公平に感じます。一方で、評価で差をつけると、評価に納得できない職員の不満が加算への不信に変わります。評価を配分に反映させるなら、差のつけ方と説明の仕方を、配る前に決めておく必要があります。

運用

評価で差をつけてよいのか

処遇改善加算の配分方法は、事業所が計画書で定め、職員に周知していれば、評価の結果で差をつけることは認められています。むしろキャリアパス要件Ⅲでは、昇給の仕組みとして「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」が選択肢の一つになっており、人事評価による昇給判定は加算の要件と相性がよい仕組みです。

ただし、評価で配分が下がった職員がいても、事業所全体の賃金改善額は加算額を上回っていなければなりません。評価は職員間の配分を決めるものであって、総額を減らす手段ではありません。

評価をどこに反映させるか

評価の反映先と特徴
反映先特徴向いている事業所
基本給の昇給額一度上がると下がらない。長期の差になる評価制度が数年運用されている
月額の処遇改善手当年度ごとに見直せる。差を調整しやすい評価を始めたばかり
年度末の一時金その年の貢献を反映できる。月額の要件には数えにくい月額で要件を満たしたうえで差をつけたい

評価制度を始めたばかりなら、まず一時金か月額手当の一部に反映させ、評価の基準が職員に浸透してから昇給に広げると、失敗したときの影響を小さくできます。

差の幅を決める

差をつけすぎると、評価の低い職員の離職につながり、つけなさすぎると評価の意味がなくなります。よく使われるのは、全員に配る基礎部分と、評価で変わる部分を分ける方法です。

基礎部分と評価部分の分け方(例:月額手当2万円の場合)
評価基礎部分評価部分合計
S1万5,000円1万円2万5,000円
A1万5,000円7,000円2万2,000円
B(標準)1万5,000円5,000円2万円
C1万5,000円2,000円1万7,000円

評価ごとの人数で評価部分の総額が変わるので、Sが多い年に総額が膨らみすぎないよう、評価部分の原資を先に決めて、評価ごとの比率で割り振る形にしておくと予算を守れます。

評価が下がった職員の扱い

前年より評価が下がり、手当が減る職員が出ることがあります。手当の金額が評価で変わることを規程に書いていなければ、減額は労働条件の不利益変更として問題になります。賃金規程に「評価の結果により毎年度見直す」と明記し、評価の基準と手当の対応表を職員に示しておきます。

評価から配分までの年間の流れ

評価を配分に反映させるには、評価の時期と、計画書・手当の改定・一時金の時期をかみ合わせる必要があります。評価が終わる前に手当を改定してしまうと、評価を反映できるのは翌年度になります。

年間の流れ(賃金改善実施期間が4月〜翌3月の例)
時期評価の作業加算の作業
1〜2月年間評価の面談と評価の確定翌年度の加算見込額と配分の原資を決める
3月評価結果を職員に通知する翌年度の手当額を決め、規程の見直しがあれば行う
4月新年度の目標を設定する計画書を提出し、新しい手当額で支給を始める
9〜10月中間面談で進み具合を確認する加算の入金と支給額の差を確認する
年度末一時金に反映する評価を確定する残額を一時金で精算する

評価の時期を変えられない場合は、評価の結果を反映させる先を一時金にすると、時期のずれを吸収しやすくなります。

経営者として気を付けること

評価を配分に反映させる目的は、差をつけることではなく、何をすれば処遇が上がるかを職員に示すことです。評価の基準が曖昧なまま差をつけると、管理者の好き嫌いで決まっていると受け取られ、加算の配分そのものへの不信になります。評価者になる管理者の研修と、評価基準の公開を、配分への反映より先に整えてください。

社労士が顧問先で確認すること

  • 評価で手当が変わることが賃金規程に書かれているか
  • 計画書に記載した配分方法と、実際の評価の反映方法が一致しているか
  • 評価で下がった職員がいても、事業所全体の賃金改善額が加算額を上回っているか
  • 評価の基準と結果、面談の記録が残っているか
  • キャリアパス要件Ⅲの昇給の仕組みとして評価制度を使う場合、昇給の判定基準が書面化されているか

よくある質問

評価が最低の職員に、処遇改善分を払わなくてもよいですか

配分ゼロの職員を作ることは避けたほうが安全です。対象とした職員に一切配らない設計は、周知の内容や職員の納得の面で問題になりやすく、基礎部分は全員に配る形をおすすめします。

評価制度がない事業所でも差をつけられますか

資格・経験年数・役職など、客観的に決まる基準で差をつける方法があります。評価制度を作るまでの間は、こうした基準で配分し、評価制度が整ってから一部を評価に置き換えていくのが現実的です。

パート職員も評価の対象にすべきですか

処遇改善分を配る対象にしているなら、同じ考え方で評価するほうが公平です。ただし勤務時間が短い職員に常勤と同じ評価項目を当てはめると不利になりやすいので、項目を絞るか、評価部分を勤務時間で按分するなどの調整をします。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。