パート・非常勤職員への処遇改善加算の配り方 — 時給で上げるか、時間で按分するか

介護事業所の職員の多くはパートや非常勤です。常勤職員と同じ月額手当を一律に払うと、週1日の職員と週5日の職員が同じ額を受け取ることになり、常勤職員の不満につながります。非常勤への配り方は、最初に方式を決めておかないと毎年もめます。

実務

方式は大きく3つ

非常勤職員への配分方式
方式中身向いている場面
時給への上乗せ時給を一律または職種ごとに○円上げる時給制の職員が多い。計算がもっとも単純
勤務時間による按分常勤の手当額 × 勤務時間 ÷ 常勤の所定時間常勤と同じ基準で公平に配りたい
定額の手当勤務日数や時間に関係なく一定額少人数で勤務時間がそろっている

どの方式でも要件上の問題はありません。大事なのは常勤と非常勤で基準がつながっていることです。常勤は月額手当、非常勤は時給上乗せと分ける場合も、時給の上乗せ額を常勤の手当額から換算しておくと、職員に説明しやすくなります。

時給への上乗せがいちばん扱いやすい

時給制の職員には、時給そのものを上げる方法がもっとも単純です。働いた時間に比例して受け取る額が増えるので、勤務時間の違いによる不公平が自然に解消されます。

  • 毎月決まって支払われる賃金になるので、月額賃金改善要件にも数えやすい
  • 求人票の時給が上がるので、採用の場面で効果が見える
  • 勤務時間が月によって変わっても、計算をやり直す必要がない

一方で、勤務時間が多かった月は支給額が増え、加算の原資を上回ることがあります。時給の上乗せ額は、全職員の年間の勤務時間の見込みから逆算して決めます。

常勤換算で按分する考え方

常勤職員に月額2万円の手当を払っているなら、所定時間の半分働く職員には1万円、という考え方です。常勤と非常勤を同じ物差しで扱えるので、公平性の説明はもっともしやすい方式です。

扶養の範囲で働く職員への影響

配偶者の扶養の範囲内で働いている職員は、年収が一定額を超えないように勤務時間を調整していることがあります。時給を上げると同じ時間でも年収が増えるので、かえって勤務時間を減らす結果になることがあります。

加算の要件上は賃金を上げていれば問題ありませんが、現場の人手が減るのは事業所にとって痛手です。時給を上げる時期には、扶養の範囲で働いている職員に事前に伝え、勤務時間の見直しが必要かどうかを一緒に確認しておくと、年末の急な欠員を防げます。

掛け持ち・兼務の職員

同じ法人の複数の事業所で働いている職員や、介護職と他の職種を兼ねている職員は、どの事業所の加算から、どの職種として配るのかを決めておく必要があります。

  1. 事業所ごとの勤務時間を記録し、その割合で各事業所の配分に計上する
  2. 職種を兼ねている場合は、介護職として働いた時間とそれ以外を分けて記録する
  3. 同じ職員に二重に手当を計上していないかを、法人全体の一覧で確認する

兼務の職員は、事業所ごとの表では二重に数えられたり、どこにも数えられなかったりしがちです。職員を軸にした一覧で、配分先の事業所が漏れなく1回ずつになっているかを年に一度は確認してください。

経営者として決めておくこと

非常勤職員への配分は、人件費の予測がもっともぶれやすい部分です。勤務時間が月によって大きく変わる職員が多いと、時給への上乗せ方式では年間の支給総額が読みにくくなります。経営者として次の点を決めておくと、年度末の過不足を小さくできます。

  • 常勤と非常勤の配分の比率(総額のうち何割を非常勤に回すか)
  • 時給の上乗せ額の見直し時期(年1回、加算額が確定した後など)
  • 上乗せ方式を変える場合の移行期間と、職員への説明の段取り

非常勤職員は求人の競争がもっとも激しい層でもあります。近隣の事業所が時給を上げているのに自社だけ据え置くと、加算を取っていても人が集まりません。処遇改善の上乗せを含めた時給が、地域の相場と比べてどの位置にあるかを年に一度は確認し、配分方式の判断材料にしてください。

社労士が顧問先で確認すること

非常勤職員の配分では、労働法の面での確認も欠かせません。加算の要件を満たしていても、労働条件の扱いで問題が出ることがあります。

  1. 雇用契約書や労働条件通知書に、上乗せ後の時給が反映されているか
  2. 常勤と非常勤で手当の扱いに差を付ける場合、その理由を職務内容や責任の違いで説明できるか(同一労働同一賃金の観点)
  3. 時給を上げたことで社会保険の加入基準を超える職員がいないか
  4. 按分方式の場合、按分の計算方法が規程に書かれているか
  5. 兼務の職員について、事業所ごとの勤務時間の記録が残っているか

よくある質問

登録ヘルパーにも配分しなければなりませんか

登録ヘルパーも介護職員なので、配分の対象に含めることが基本です。稼働時間に応じて時給や1回あたりの単価に上乗せする形が多く、稼働が少ない月の扱いも規程で決めておきます。

非常勤の職員から、手当より時給を上げてほしいと言われました

時給への上乗せは月額賃金改善要件にも数えやすく、本人の受け取り方も分かりやすい方法です。常勤との基準のつながりが説明できるなら、時給への上乗せに切り替えることを検討してよいでしょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する助言ではありません。 介護職員等処遇改善加算の要件・様式・提出期限は改定や指定権者(都道府県・市町村)の 運用によって異なります。実際の算定・届出にあたっては、必ず最新の通知および 指定権者の案内をご確認ください。