基本は介護職員、ただし事業所の裁量がある
加算の名称が示すとおり、中心になるのは介護職員です。一方で、一本化された加算では事業所内の配分について一定の裁量が認められており、介護職員以外の職種へ配ることも可能とされています。
ただし「配ってよい」と「配っても加算の使途として数えられる」は同じではありません。配分の範囲を広げる場合は、その範囲を計画書に書き、実績報告でも同じ範囲で集計する必要があります。年度の途中で思いついて広げると、計画と実績が合わなくなります。
職種ごとの考え方
| 職種 | 考え方 |
|---|---|
| 介護職員 | 中心となる対象。ここを外す設計はない |
| 看護職員 | 介護の現場で一体となって働いている場合、対象に含める判断がある |
| 生活相談員・支援相談員 | 同様に、事業所の判断で対象に含められる |
| 機能訓練指導員 | 同様に、事業所の判断で対象に含められる |
| 介護支援専門員 | 事業所の判断による。ただし居宅介護支援は加算の対象サービスではない |
| 調理・清掃・事務 | 含める判断はあり得るが、介護職員への配分を薄めることになる |
| 管理者・役員 | 職員としての賃金部分と役員報酬を分けて考える必要がある |
どの職種を含めるかで、1人あたりの金額が大きく変わります。対象を広げれば全員に薄く配ることになり、絞れば介護職員に厚く配れます。加算の目的が介護職員の定着であることを踏まえると、広げすぎると目的から外れます。
加算の対象にならないサービスの職員
もうひとつ混同されやすいのが、サービス種別による区別です。訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援、福祉用具貸与といったサービスは、処遇改善加算の対象になりません。
つまり、これらのサービスだけを行っている事業所には加算が交付されません。交付されていない事業所の職員へ、他の事業所の加算を原資として配ることはできません。事業所ごとに、交付された額の範囲で配るという対応関係を崩さないでください。
ここを間違えると、法人全体では配りきっているのに、事業所ごとに見ると不足と超過が同時に発生している状態になります。実績報告は事業所ごとに出すため、超過している事業所の分で不足を埋めることはできません。
兼務している職員の扱い
複数の事業所を兼務している職員、加算対象サービスと対象外サービスを兼務している職員は、どの事業所の加算から配るのかを決める必要があります。
- 勤務時間の割合で按分する。もっとも説明しやすい
- 主たる所属の事業所にまとめる。簡便だが、兼務先の加算と対応しなくなる
- 対象外サービスでの勤務時間に相当する部分は、加算による改善から除く
どの方法でも、同じ方法を年度を通して使い、計画書と実績報告でそろえてください。按分の方法を記録していないと、翌年度に別の担当者が別の方法で計算し、前年度と比較できなくなります。
範囲を決めたら記録する
対象職種の範囲は、年度の途中で思い出せるものではありません。次の項目を、計画書とは別に手元の資料としても残しておいてください。
- 対象に含める職種の一覧
- 含めない職種と、その理由
- 兼務者の按分の方法
- 職種ごとに配分の重みを変えるなら、その考え方
- 年度の途中で入職した職員をどう扱うか
とくに「含めない職種とその理由」は残す価値があります。運営指導で配分の考え方を聞かれたときに答えられますし、職員から「なぜ自分は対象外なのか」と聞かれたときの説明にもなります。
経営者として決めること
対象職種を広げるかどうかは、加算の要件の問題である前に、法人の中で誰の賃金を優先して上げるかという経営判断です。原資は同じなので、範囲を広げれば介護職員1人あたりの配分は減ります。
| 方針 | 良い点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 介護職員に絞る | 介護職員の賃金を最大限に上げられ、採用で訴求しやすい | 看護職員や事務職員との賃金差が開き、不満が出やすい |
| 他の職種にも広げる | 職場全体の不公平感を抑えられる | 介護職員1人あたりの上乗せが薄まり、求人での差が出にくい |
どちらが正しいということはありません。採用で困っている職種がどこか、離職が多いのはどの職種か、という自法人の人の課題から逆算して決めるのが筋です。介護職員の採用が最大の課題なら介護職員に厚く、事務や看護の離職が続いているなら範囲を広げることを検討します。
社労士が顧問先で確認すること
- 計画書に書いた対象職種の範囲と、実際に手当を払っている職種が一致しているか
- 兼務者の按分の方法が決まっていて、勤務時間の記録で裏付けられるか
- 役員や、加算の対象にならないサービスだけに従事する職員に配分していないか
- 職種ごとに配分額を変える場合、その理由を職務内容で説明できるか
- 範囲を年度の途中で変えた場合、変更の時期と理由が記録されているか
対象職種の範囲は、顧問先の経営者が深く考えずに前年度の設定を引き継いでいることがよくあります。年度初めの計画書の作成時に、範囲を見直す機会があることを顧問先に伝えると、法人の課題に合った配分を考えるきっかけになります。